こんにちは、おすすめSaaS.com(当サイト)運営の金森(@user_id_us)です。
今回の記事では、とある上場企業の事業会社にて、M&A実行責任者をつとめる方に匿名(会社名・氏名)でインタビューしております。
M&A初心者目線で、気になったことを伺っております。
M&Aの参考になれば幸いです。
とある事業会社にてM&Aの実行責任者をしています。これまでのキャリアとしては、企画戦略やM&Aの仕事をずっとやっています。
大きく流れを説明しましょう。
・ソーシング
・デューデリジェンス
・ドキュメンテーション
・クロージング
・PMI(Post Merger Integration)
それぞれを簡単に説明します。(M&Aに詳しくないインタビュアー向けに簡単に説明してくださっています)
・ソーシング:案件を金融機関やM&A仲介会社からとってくること
・デューデリジェンス:初期検討が終わってOKとなったあと、より詳しく調べること
・ドキュメンテーション:買えそうな場合、買い手と売り手における契約書に落とすこと
・クロージング:契約が締結された際、実際にお金を動かすこと。例えば株式譲渡なら、株が100万円なら100万円を渡すイメージです。
※実務的には銀行振込で完了します。
・PMI:M&A実行後の統合のこと。買い手企業をどう仲間にするか、当初想定した収益をどう出すか、などです。
この流れの中で最も大変なのは、PMIと一般的に言われます。教科書が少ないし、ノリだけでやれないからです。
弊社の場合は、以下のようなM&A仲介会社から案件を引っ張ってきています。
・日本M&Aセンター
・M&Aキャピタルパートナーズ
・ストライク
・その他、業界特化型のM&A仲介会社
日本M&Aセンターを利用することが最も多いです。案件数も豊富です。
メリットとしては、ほとんどの担当者がちゃんとしています。面倒な交渉ごともやってくれます。サービスとしては質が高いケースが多いです。まれに、外れの担当者に当たることもありますが…。
デメリットとしては正直、手数料は高いです。着手金、中間報酬、成功報酬と3本立てです。私の知る限り、ディスカウントも一切ありません。
ほとんどの場合、営業担当の繋がりです。ご縁というやつですね。
3つあります。
①企業文化
②価格
③既存事業との親和性、戦略との整合性
①の企業文化はトップ同士で話してもらって判断します。「あの人は良い、あの人は嫌」といったイメージです。
②の価格は、DCF法やEBITDAマルチプル法などを使って算出します。
③の既存事業との親和性、戦略との整合性について補足します。例えば、過去にAという事業を持っていて売却しているのに、他社から同じA事業を買うということはありません。
大きくは、入り口と出口に課題があります。
具体的には、下記です。
・ソーシング
・PMI(Post Merger Integration)
買い手側のフロントマンである、営業(案件をとってくる担当)の資質によりけりだからです。組織だって行うのが難しい印象です。
イケイケなノリも必要ですし、その一方で機密情報なので「この人なら大丈夫」と安心してもらうこと、両方が営業に求められます。
なぜかというと、金融機関やM&A仲介会社でもイケイケな営業を好む人もいるからです。もちろん、イケイケに出来ますと言っておいて、検討してすぐダメだと信頼を失います。一方で、慎重で堅苦しい対応ばかりしていると嫌がられてしまうこともあります。
バランスが難しいので人材育成も、採用も難しいんですよね。そのため結局、証券や銀行など金融機関出身の人を張らざるを得ないんです。
PMIが難しいのは、正解がないからです。いろんなやり方を試行錯誤するしかありません。
中小のM&A仲介会社をたまに使うと、案件の質がよくないと思うことがあります。中小仲介会社が扱うということは、それだけ情報が出回っているからです。基本的にM&Aの場合、情報が出回っていないものほど、良い案件が多いものです。
というのも、企業を売却する際って最初は金融機関に相談するんですよね。そこでダメだから違うところに行くという流れがありますから。
私の所感としては正直、まだ厳しいのでは?と思っています。多くの場合、お金を借りている先、あるいは預けている先、つまり金融機関に相談するんですよね。金融機関は情報管理もしっかりしていますから。
ただし、金融機関にもM&Aノウハウがあるところは限られています。ざっくり、メガバンクのような企業規模が大きいところほどM&Aノウハウがあり、小さくなるほどM&Aノウハウがないと考えてもらえればと。
金融機関に相談したもののピンと来ない時に、M&A仲介会社に相談する流れがありますね。
ソーシングしてきた企業、経営者、キーパーソンのリファレンスチェックを実行します。
その際、下記のようなサービスも利用します。
例えば、ソーシングで引っ張ってきた案件数が100件あったとしましょう。
この際、箸にも棒にもかからない案件が半数の50件を占めます。それには何もしないです。
そして、案件が50件残ったら、初期検討として日経テレコンを利用してリファレンスチェックを行います。おおよそ半分に絞ることができます。
その次に25件を帝国データバンクを利用して調査します。高いのですが、1件の調査につき3〜5万円程度かかります。小さい企業でデータがない場合、ちゃんと調査する必要があるので期間と金額が通常よりもっとかかることも。費用が高いので、ある程度確度が高くなってからしかやりません。
ちなみに、日経テレコンと帝国データバンクによる調査は、アカウントを持っていてお金を払えば基本的にすぐ完了します。
最後に、残った1件をKrollで調査するか、しないかです。Krollは妥協なく調べたいときに利用します。Krollは数百万円程度かかりますが、本当にしっかりと調べてくれます。基本的には1ヶ月ほどで終わります。長くかかって2ヶ月程度です。
興信所をたまに利用する企業もいますが、私は使ったことがありません。
反社会的勢力との関わりが、万が一でもあってはならないから調べます。
完全には分からないため、リファレンスチェックを一定しっかりやったことを示す必要があります。
証券会社の審査部門に、「少なくとも日経テレコンはどんな場合でも絶対見ろ」とアドバイスをもらっています。必ず見るよう、社内ルールにしています。
自社としては使いたいけど、使われたくないですね。特に、部長クラスを採用するときには絶対使いたい。というのも、部長クラスの採用は正直に言って、ハズレが多いからです。
年収を1,000万円超えてきて、ハズレだと面倒なんです。メンバーのモチベーションは下がりますし、会社の雰囲気悪くなりますし、ごたつきます。
一方で、転職する人って、元々の企業からよく思われている人は少ないのでは?と。ネガティブな評価が多いのかな、使い方が難しいかも、と感じました。
インタビューは以上です。
私自身、採用におけるリファレンスチェックサービスのことしか知りませんでした。M&A実行時もリファレンスチェックサービスをすると初めて知りました。
SaaSとはあまり関係ない内容ですが、今後もこのようなビジネスに関連する取材は継続します。
面白いと思った方はSNSでシェアいただけると幸いです。